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       題しらず 清原深養父  
613   
   今ははや  恋ひ死なましを  あひ見むと  たのめしことぞ  命なりける
          
     
  • たのめし ・・・ 期待させた
  
もう今はすぐにでも恋しくて死にそうですが、愛し合うことを期待させたあなたの言葉だけが私の命をささえているのです、という歌。 611番の躬恒の歌を下世話にしたような感じの歌である。

  「恋死ぬ」という表現を使った深養父の歌には他に、698番の 「恋しとは〜死ぬとぞただに 言ふべかりける」という歌と次の歌がある。

 
603   
   恋ひ死なば   たが名はたたじ  世の中の  常なきものと  言ひはなすとも
     
        その他の 「恋死ぬ」という歌については 492番の歌のページを、「あひ見る」ということを詠った歌の一覧については 97番の歌のページを参照。; また、「〜ましを」という言葉を使った歌の一覧は 
236番の歌のページを、 「〜なまし」というかたちを持った歌の一覧は 63番の歌のページを参照。

 "たのめし" の 「たのめ」は下二段活用の「頼む」の連用形で、「頼りにさせる・あてにさせる」ということ。四段活用の「頼む」(連用形は「たのみ」)は、「頼みにする」ということなので区別がややこしい。それぞれが使われている歌の一覧を示すと次の通り。

 
        [下二段活用:頼む −あてにさせる]  
     
613番    あひ見むと たのめしことぞ 命なりける  清原深養父
614番    たのめつつ あはで年ふる いつはりに  凡河内躬恒
736番    たのめこし 言の葉今は かへしてむ  藤原因香
773番    衣にかかり 我をたのむる  読人知らず
818番    ありそ海の 浜の真砂とたのめしは  読人知らず


 
        [四段活用:頼む −頼みにする]  
     
292番    たのむかげなく  もみぢ散りけり  僧正遍照
376番    見べき君とし  たのまねば  寵
443番    ありと見て  たのむぞかたき  読人知らず
451番    露をたのむ  かたければ  在原滋春
525番    あひ見むことを  たのみつつ  読人知らず
553番    夢てふものは  たのみそめてき  小野小町
555番    人をぞたのむ  暮るる夜ごとに  素性法師
618番    身さへ流ると  聞かばたのま  在原業平
706番    思へどえこそ  たのまざりけれ  読人知らず
713番    たがまことをか  我はたのま  読人知らず
759番    来ぬ人たのむ  我ぞはかなき  読人知らず
792番    流れてなほも  たのまるるかな  紀友則
827番    流れてとだに  たのまれぬ身は  紀友則
968番    光をのみぞ  たのむべらなる  伊勢
978番    雪とつもらば  たのまれず  凡河内躬恒
1006番    たのむかげなく  なりはてて  伊勢
1044番    染めし心も  たのまれず  読人知らず


 
        [(参考)名詞:頼み]  
     
467番    あだにはならぬ  たのみとぞ聞く  大江千里
822番    あふたのみこそ  かなしけれ  小野小町


 
( 2001/12/03 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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