Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻二

       題しらず 読人知らず  
97   
   春ごとに  花のさかりは  ありなめど  あひ見むことは  命なりけり
          
        春の度に花の盛りは来るだろうが、それに逢えるのは人の命のある間、という歌。

  一年で一周する小さな歯車と、その歯車で駆動され下から上に吐き出されてゆく棒を詠ったような感じである。その棒は 「春」のマークが見えない所から引き上げられ、またそのマークが見えない所へと戻ってゆく。

  この歌の他に "花のさかり" という言葉を使った歌としては、同じ春歌下に125番の読人知らずの「花のさかりに あはましものを」という山吹を詠った歌がある。

  また、この歌の場合、「あひ見る」とは、花と人が出合うことを指すが、基本的には 「人が出逢う・対面する」ということで、男女の仲のことを表すこともある。古今和歌集の中では以下のような歌に使われている。

 
     
97番    あひ見むことは  命なりけり  読人知らず
399番    あひ見ぬ先に  何を恋ひまし  凡河内躬恒
525番    夢の内に  あひ見むことを  たのみつつ  読人知らず
613番    あひ見む  たのめしことぞ  命なりける  清原深養父
648番    月影に  あかずも君を  あひ見つるかな  読人知らず
650番    いかにせむとか  あひ見そめけむ  読人知らず
678番    あひ見ずは  恋しきことも  なからまし  読人知らず
696番    とはにあひ見む  ことをのみこそ  読人知らず
760番    あひ見ねば  恋こそまされ  読人知らず
808番    あひ見ぬも  憂きも我が身の  唐衣  因幡
1009番    またもあひ見む  ふたもとある杉  読人知らず
1025番    こころみがてら  あひ見ねば  読人知らず
1029番    あひ見まく  星は数なく  ありながら  紀有朋


 
( 2001/11/12 )   
(改 2004/03/05 )   
 
前歌    戻る    次歌