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       題しらず 素性法師  
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   秋風の  身に寒ければ  つれもなき  人をぞたのむ  暮るる夜ごとに
          
        秋風が身にしみるほど寒いので、毎日暮れる夜ごとに、つれないあの人でも頼みにしている、という歌。普通に考えれば文字通りの歌だが、冷たい秋風が冷たい相手を思い出させ、そんな人でも頼みにせざるをえない自分が哀しい、という感じにも見えなくもない。

  その線で考えると、この歌では秋の風の寒さを詠って「夜ごとにたのむ」と言っているが、次の躬恒の 「冬の長歌」の 「吉野の山の 山嵐も 寒く日ごとに なりゆけば」という部分を見ると、この素性の歌の秋風も、期待する気持ちが空振りするごとに、 "夜ごとに" 冷たくなってゆくとも考えられる。

 
1005   
    ちはやぶる  神無月とや  今朝よりは  雲りもあへず  うちしぐれ  紅葉と共に  ふるさとの
  
吉野の山の  山嵐も  寒く日ごとに  なりゆけば  玉の緒とけて  こき散らし  あられ乱れて
  霜こほり  いや固まれる  庭の面に  むらむら見ゆる  冬草の  上に降りしく  白雪の
  つもりつもりて  あらたまの  年をあまたも  すぐしつるかな
     
          「秋風」を詠った歌の一覧は 85番の歌のページを、「つれもなき人」という言葉を使った歌の一覧については 486番の歌のページを、「たのむ」という言葉が使った歌の一覧については 613番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/12 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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