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       題しらず 読人知らず  
492   
   吉野川  岩切りとほし  行く水の  音にはたてじ  恋は死ぬとも
          
     
  • 岩切りとほし ・・・ 岩を穿ち貫いて
  
吉野川の岩を貫くような勢いで流れる水の音は立てまい、恋しくて死んでしまうとも、という歌。 
「音を立てる」というのは自ら気持ちをあらわにして人の噂になる、世間に知れるということ。恋する気持ちは、その激流のように激しくとも、ということを合わせている。

  この歌が流れの激しさと音について言っているのに対して、吉野川の水の早さで恋の気持ちを詠ったものとしては、次のような貫之の歌がある。

 
471   
   吉野川    岩波高く    行く水の   早くぞ人を  思ひそめてし
     
        「行く水」を詠った歌の一覧は 522番の歌のページを参照。

  「恋死ぬ」という歌には次のようなものがある。

 
     
492番    行く水の  音にはたてじ  恋は死ぬとも  読人知らず
494番    下にのみ  流れて恋ひむ  恋は死ぬとも  読人知らず
517番    恋しきに 命をかふる ものならば  死にはやすくぞ  読人知らず
518番    いざこころみむ  恋ひや死ぬる  読人知らず
526番    恋ひ死ね  するわざならし  読人知らず
603番    恋ひ死なば  たが名はたたじ  清原深養父
613番    今ははや  恋ひ死なましを  清原深養父
654番    おもふどち  ひとりひとりが  恋ひ死な  読人知らず
661番    隠れ沼の  下にかよひて  恋は死ぬとも  紀友則
698番    恋しとは  たが名づけけむ  死ぬとぞただに  清原深養父


 
( 2001/10/02 )   
(改 2004/03/06 )   
 
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