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       朱雀院の女郎花あはせによみてたてまつりける 壬生忠岑  
236   
   ひとりのみ  ながむるよりは  女郎花  我が住む宿に  植ゑて見ましを
          
        ただ一人で物憂く眺めているぐらいなら、このオミナエシを連れ去って、自分の家に植えて見ようものを、という歌。

  眺めている状態は疎遠であることを示し、宿に植えて見る、ということはそれを連れて帰って一緒に過したい、ということを表す。まるで誘拐犯のような発想だが、一応 "見ましを" の反実仮想の助動詞「まし」に、そんなことはできないけれどね、という気持ちを見ておく。

  次の藤原敏行の、野原で野宿をしようか、と言っている歌と合わせて見たい。

 
228   
   秋の野に  宿りはすべし    女郎花   名をむつまじみ  旅ならなくに
     
        「〜ましを」という言葉を使った歌には次のようなものがある。その他のかたちで 「まし」を使っている歌については 46番の歌のページを参照。

 
     
236番    我が住む宿に  植ゑて見ましを  壬生忠岑
552番    夢と知りせば  覚めざらましを  小野小町
613番    今ははや  恋ひ死なましを  清原深養父
765番    忘れ草  種とらましを  読人知らず
865番    袂ゆたかに  たてと言はましを  読人知らず
895番    なしと答へて  あはざらましを  読人知らず
925番    山わけごろも  織りて着ましを  神退法師
1090番    みやこのつとに  いざと言はましを  読人知らず


 
        また、「ながむ」という言葉を使った歌の一覧については 113番の歌のページを参照。

 
( 2001/07/15 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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