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       題しらず 凡河内躬恒  
612   
   我のみぞ  かなしかりける  彦星も  あはですぐせる  年しなければ
          
        自分だけが逢えずにこんな悲しい思いをするのか、七夕の彦星でさえ逢えずに過す年はないものを、という歌。シンプルな譬えでわかりやすい歌である。 「かなし」という言葉を使った歌の一覧は 578番の歌のページを参照。

  "すぐせる" は 「すぐせ+る」で四段活用の動詞「過ぐす」の命令形+完了・継続の助動詞「り」の連体形である。 「過ぐす」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
98番    花のごと  世のつねならばすぐしてし  読人知らず
351番    いたづらに  すぐす月日は 思ほえで  藤原興風
612番    彦星も  あはですぐせる 年しなければ  凡河内躬恒
897番    あはれあなうと  すぐしつるかな  読人知らず
1005番    あらたまの  年をあまたもすぐしつるかな  凡河内躬恒


 
        また、「逢えずに年を過ごす」という歌としては、473番の在原元方の「関のこなたに 年をふるかな」、 614番の同じ躬恒の歌にも「たのめつつ あはで年ふる いつはりに」というような歌がある。

  「経(ふ)」と 「過ぐす」は、何かニュアンスの違いがありそうでもあるが、その差はほとんどわからない。 「経(ふ)」を使った歌の一覧については 596番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/10 )   
(改 2003/12/31 )   
 
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