Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十五

       題しらず 読人知らず  
773   
   今しはと  わびにしものを  ささがにの  衣にかかり  我をたのむる
          
     
  • ささがに ・・・ 蜘蛛
  • たのむる ・・・ 期待させる
  
今度こそはこれで終わりと、つらい気持ちでいるものを、蜘蛛が衣に付いて自分に期待を持たせることだ、という歌。蜘蛛がせわしなく動く、あるいは蜘蛛が衣に付くと、待ち人が来るという言い伝えをベースにしている。 「衣にかかる」と言っているのは、蜘蛛本体ではなく、蜘蛛の糸を指しているのかもしれない。

  「今しはと」という言葉は、182番の歌などに使われている 「今はとて」と同じようなニュアンスである。 「わぶ」という言葉を使った歌の一覧は 937番の歌のページを参照。

  "我をたのむる" は、一見 「蜘蛛が自分を頼りにする」というように見えるが、ここでは 「蜘蛛が自分を(恋人が来るかと)あてにさせる」という意味。 「たのむる」は下二段活用の「たのむ」の連体形で下二段活用の 「たのむ」は 「頼りにさせる・あてにさせる」ということ。 「たのむ」という言葉を使った歌の一覧は 613番の歌のページを参照。 「ささがに」を使った他の歌としては、次の友則の 「女郎花」の物名の歌がある。

 
437   
   白露を  玉にぬくとや  ささがにの   花にも葉にも  いとをみなへし
     

( 2001/11/15 )   
(改 2004/03/07 )   
 
前歌    戻る    次歌