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       ひたちへまかりける時に、藤原のきみとしによみてつかはしける   
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   朝なけに  見べき君とし  たのまねば  思ひたちぬる  草枕なり
          
     
  • 朝なけに ・・・ 朝ごと日ごとに常に (朝な日に)
  寵(うつく)は生没年不詳。源精の娘と言われる。古今和歌集にはこの歌を含め三首が採られている。詞書の意味は、「常陸の国に行く時、藤原公利に詠んで送った」歌ということ。藤原公利については
「古今集人物人事考」 (2000 山下道代  風間書房  ISBN 4-7599-1201-0) に 「藤原公利」という詳しい論考がある。

  歌の意味は、
常に逢うことができないあなたなので、頼みにできず、もう思い立って旅に出てしまうことにしました、ということ。 "君とし" に 「公利」の名が、 "思ひたちぬる" に 「常陸」の地名が詠みこまれている。また "思ひたちぬる" の部分は、「古今和歌集打聴」の上田秋成の細書(=注)のように 「思い断つ」に掛けているとする説もある(「又この歌公利常陸をもよみ入れて猶思ひ立ぬるをおもひ断ぬるにかけたりともいふべし」)。

  女性の側が離れてゆくという歌として、780番の「三輪の山 いかに待ち見む」という伊勢の歌が思い出される。それからの連想で言えば、この歌は作者が父のについて常陸の国に行く時に、当てつけで "思ひたちぬる 草枕" と言っているようにも思える。

  "朝なけに" の 「な」は接尾語で、「朝な朝な」などの言葉にも使われている。 「朝な」という言葉を使っている歌の一覧については 16番の歌のページを参照。また、「たのむ」という言葉を使っている歌の一覧については 613番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/11 )   
(改 2004/02/13 )   
 
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