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       題しらず 読人知らず  
525   
   夢の内に  あひ見むことを  たのみつつ  くらせる宵は  寝む方もなし
          
     
  • くらせる ・・・ 日が暮れるまで時を過ごす (暮らす)
  
夢の中で出逢うことをあてにして過ごす宵は、その思いに邪魔されて寝ようとしても眠れない、という歌。 "くらせる" は 「くらせ+る」で 「暮らす」の命令形+継続・完了の助動詞「り」の連体形。

  "寝む方もなし" の 「方」は、516番の「よひよひに 枕さだめむ 方もなし」という歌からは 「寝る向き・方向・方角」とも見えるが、どちらかというと 1023番の「せむ方なみぞ 床なかにをる」という 「せむ方なし」(=どうしようもない)という言葉の略のように見える。完全な掛詞ではないが、二つの意味を掛けているのかもしれない。 「方」という言葉を使った歌の一覧は 201番の歌ページを参照。

  "あひ見む" という言葉は 97番の歌などでも使われていて、基本的には 「出逢う・対面する」ということだが 「情を交わす」という意味もあり、この歌の場合は状況からして後者の意味であろう。また、「夢をたのみにする」という他の歌としては、553番に 「夢てふものは たのみそめてき」という小野小町の歌がある。 「たのむ」という言葉を使った歌の一覧は 613番の歌のページを参照。

  また、「くらす」という言葉は 771番の「思ひくらしの 音をのみぞ鳴く」という歌を思い出させる。

 
( 2001/11/29 )   
(改 2004/01/18 )   
 
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