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       題しらず 読人知らず  
50   
   山高み  人もすさめぬ  桜花  いたくなわびそ  我見はやさむ
          
     
  • すさめぬ ・・・ 愛さない
  • いたく ・・・ ひどく
  
山が高いので近くで人に賞賛されることのない桜を、ひどく嘆くことはない、私が褒めてあげるから、という歌。人が見ないからといって嘆いて早く散ったりしないで欲しい、という気持ちである。ただ作者自身も "山高み" であるために、その桜には近づけず、「傍にいて愛でてあげるわけにはいかないけれど...」という含みもある。 「わぶ」という言葉を使った歌の一覧は 937番の歌のページを参照。

  "山高み" は 「山+高+み」で「高」は形容詞「高し」の語幹、「み」は理由を表す接尾語である。これは 497番の歌のページで一覧している 「〜を〜み」というかたちと同じ意味である。古今和歌集の中で 「名詞+形容詞の語幹+み」のある歌をあげると次の通り。

 
     
50番    山高み 人もすさめぬ 桜花  読人知らず
87番    山高み 見つつ我がこし 桜花  紀貫之
304番    落つるもみぢ葉 水清み  凡河内躬恒
358番    山高み 雲ゐに見ゆる 桜花  凡河内躬恒
446番    山高み つねに嵐の 吹く里は  紀利貞
494番    山高み 下ゆく水の 下にのみ  読人知らず
619番    よるべなみ 身をこそ遠く へだてつれ  読人知らず
666番    知らずともいはじ 底清み  平貞文
785番    我がゐる山の 風はやみなり  在原業平
937番    いかがと問はば 山高み  小野貞樹
1001番    せむすべなみに 庭にいでて  読人知らず
1002番    しのぶ草おふる 板間あらみ  紀貫之
1023番    せむ方なみぞ 床なかにをる  読人知らず
1029番    人に月なみ 惑ひこそすれ  紀有朋
1079番    いたゐの清水 里遠み  読人知らず


 
        前に名詞や 「〜を」などが付かず、618番の業平の「浅こそ 袖はひつらめ」のような場合は、それが理由を表す 「み」なのか、体言化する 「み」(名詞の「浅み」)なのかは微妙で区別しづらい。

  「いたく〜するな」という歌としては、196番に「きりぎりす いたくな鳴きそ 」という藤原忠房の歌がある。 「いたく」という言葉が使われている歌の一覧は 893番の歌のページを参照。

  また、この歌と同じく、心引かれるという意味の 「すさむ」が使われている歌としては、雑歌上に次のような読人知らずの歌がある。

 
892   
   大荒木の  もりの下草 おいぬれば  駒も すさめず   かる人もなし
     

( 2001/09/28 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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