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       比叡にのぼりてかへりまうできてよめる 紀貫之  
87   
   山高み  見つつ我がこし  桜花  風は心に  まかすべらなり
          
        山が高いので、近くに行きたいと思いながらも、しかたなく帰ってきたが、風はきっと思うがままにするのだろう、という歌。

  花を散らす風は近づけるのに、花を愛する自分は近づけないという口惜しさを詠っている。 227番の布留今道の「女郎花 憂しと見つつぞ ゆきすぐる」という歌は、この歌と感じが少し似ている。 "山高み" のような 「名詞+形容詞の語幹+み」というかたちの言葉を使った歌の一覧は 50番の歌のページを参照。

  また、この歌は 「山/高/見/来/我/花/風/心/任」などの語が目立っていて、ソフトな漢詩のようでもある。この歌の一つ前には、散る花を雪に譬えた躬恒の次の歌がある。

 
86   
   雪とのみ  降るだにあるを  桜花  いかに散れとか    風の吹くらむ  
     
        「まかす(任す)」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
87番    桜花 風は心に  まかすべらなり  紀貫之
355番    あかぬ心に  まかせはててむ  在原滋春
393番    別れをば  山の桜に まかせてむ  幽仙法師
859番    もみぢ葉を  風にまかせて 見るよりも  大江千里


 
        「べらなり」という言葉を使った歌の一覧については 23番の歌のページを参照。

 
( 2001/09/27 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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