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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 読人知らず  
688   
   思ふてふ  言の葉のみや  秋をへて  色もかはらぬ  ものにはあるらむ
          
        「思っている」という言葉だけが、秋という季節の中を過ぎても、色も変わらないものなのだろうか、という歌。

  漠然としていて少しわかりづらいが、「のみ」で比較しているのは、他の秋になると色が変わる葉のことで、それらと同じ秋の中にあっても 「思ふ」という言の葉だけは変らないようだ、という歌である。ここでは疑問の助詞「や」には反語の意味はなく、「おや、これだけなのか」というニュアンスと見た方が自然であろう。 「のみや」という言葉を使った歌の一覧は 55番の歌のページを参照。

  この歌での "思ふてふ" は、次の読人知らずの歌のように、相手が 「思っているよ」と言っていることとも考えられなくはないが、やはり自分が思うことを指していると思われる。その念が強いので 「秋」に耐えているという感じにも見える。

 
1038   
   思ふてふ   人の心の  くまごとに  立ち隠れつつ  見るよしもがな
     
        "思ふてふ 言の葉のみや 秋をへて " という言い方は、940番の「あはれてふ 言の葉ごとに 置く露は」という読人知らずの歌を思い出させる。 「あはれ」という言葉を使った歌の一覧は 939番の歌のページを、「〜てふ」という表現を持った歌の一覧は 36番の歌のページを参照。

  また、「言の葉」という言葉が使われている歌には次のようなものがある。

 
     
688番    思ふてふ  言の葉のみや 秋をへて  読人知らず
712番    人の言の葉  うれしからまし  読人知らず
736番    たのめこし  言の葉今は かへしてむ  藤原因香
737番    今はとて  かへす言の葉 拾ひおきて  源能有
782番    言の葉さへに  うつろひにけり  小野小町
788番    つれもなく  なりゆく人の 言の葉  源宗于
820番    時雨つつ  もみづるよりも 言の葉  読人知らず
854番    ことならば  言の葉さへも 消えななむ  紀友則
940番    あはれてふ  言の葉ごとに 置く露は  読人知らず
958番    世にふれば  言の葉しげき 呉竹の  読人知らず
1002番    八千草の  言の葉ごとに すべらぎの  紀貫之
1003番    身はしもながら  言の葉  壬生忠岑


 
        "秋をへて" の「経(ふ)」という言葉が使われている歌の一覧は 596番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/30 )   
(改 2004/03/15 )   
 
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