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       山のさくらを見てよめる 素性法師  
55   
   見てのみや  人にかたらむ  桜花  手ごとに折りて  いへづとにせむ
          
     
  • いへづと ・・・ 家への土産 (家苞)
  
見ただけの様子を人に話そうか、いや、それぞれが手に折った桜を持って家への土産にしよう、という歌。各自の手に持たれた桜の枝が、帰り道、途中までは一緒で、それからそれぞれの家に分かれてゆくというイメージまでを含む、と見ると面白い。

  話し言葉をそのまま歌にしたような気軽さがあり、同じ素性の309番の「もみぢ葉は 袖にこき入れて もていでなむ」という歌の桜バージョンという感じである。

  「のみや」という言葉を使った歌には次のようなものがある。すべてがこの歌のように反語のニュアンスを表すわけではなく、基本的には強調(「のみ」)された疑問(「や」)と見てよいだろう。

 
     
55番    見てのみや  人にかたらむ 桜花  素性法師
244番    我のみや  あはれと思はむ きりぎりす  素性法師
510番    くるしとのみや  思ひわたらむ  読人知らず
532番    乱れてのみや  恋ひ渡りなむ  読人知らず
688番    思ふてふ  言の葉のみや 秋をへて  読人知らず
786番    かけてのみや  恋ひむと思ひし  景式王
798番    我のみや  世をうぐひすと なきわびむ  読人知らず
835番    寝るが内に  見るをのみやは 夢と言はむ  壬生忠岑


 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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