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       題しらず 読人知らず  
689   
   さむしろに  衣かたしき  今宵もや  我を待つらむ  宇治の橋姫
          
     
  • さむしろ ・・・ 筵 (むしろ)の歌語
  • かたしき ・・・ 自分の衣だけを敷いて
  この歌には左注があって、そこでは 「または、宇治のたま姫」とされている。

  
「むしろ」に自分の衣だけを敷いて独り寝ては、今宵も私を待っているのだろうか、宇治の橋姫は、という歌。 「宇治の橋姫」については、住吉大明神が姫大明神の許に通うとか、本妻のためにコンブを取りに行って死んだ男の話などがあるが、どうもとってつけたようで、この歌の背景としては納得がゆくものではない。また、後世の源氏物語の宇治十帖の 「橋姫」や、貴船神社に呪いを授かって鬼女となる「橋姫」のイメージなどもあるが、混沌としていて、そちらからも源を一つに絞れない。ただ、何かの物語に即した古い歌という感じはする。

  また、825番の歌には「身を宇治橋の なか絶えて」とあるので、「宇治橋」が壊れていて渡れないということを、逢うことの困難さに合わせているのかもしれない。

  "この歌は恋歌四にあって思いやる気持ちは別に 「死」に結びつくものではないが、どことなく次の読人知らずの哀傷歌を連想させるものがある。 「かたしき」と 「かなしき」が似ているためか。

 
858   
   声をだに  聞かで別るる  たまよりも  なき床に寝む  君ぞかなしき
     

( 2001/11/20 )   
(改 2004/01/23 )   
 
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