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       題しらず 読人知らず  
1038   
   思ふてふ  人の心の  くまごとに  立ち隠れつつ  見るよしもがな
          
     
  • くま ・・・ 隠れた場所・道の曲がっている所 (隅)
  
「思っている」と言う、あなたの心の隅々に、隠れながらこっそり本心を覗く方法があったらよいのに、という歌。 "思ふてふ" の 「〜てふ」という表現を持った歌の一覧は 36番の歌のページを、「人の心」という言葉を使った歌の一覧については 651番の歌のページを参照。

  "くまごと" の 「ごと(=毎)」というニュアンスが少しわかりづらいが、隠していることがあるなら、逆に私はその影に隠れながら、あなたの本心に辿り着き、すべてをすっかり見てみたい、という感じか。恋歌一には、心をチェンジしてみたいと言う次のような読人知らずの歌もある。

 
540   
   心がへ    するものにもが   片恋は  苦しきものと  人に知らせむ
     
        また、「立ち隠る/立ち隠す」という言葉を使った歌をまとめてみると次の通り。

 
        [立ち隠る]  
     
235番    女郎花  秋霧にのみ 立ち隠るらむ  壬生忠岑
1038番    人の心の  くまごとに 立ち隠れつつ  読人知らず


 
        [立ち隠す]  
     
51番    春霞  峰にもをにも 立ち隠しつつ  読人知らず
58番    春霞  立ち隠すらむ 山の桜を  紀貫之
265番    秋霧の  佐保の山辺を 立ち隠すらむ  紀友則


 
        "見るよしもがな" と結ばれた歌には 1000番の「身をはやながら 見るよしもがな」という歌がある。 「よし(由)」を使った歌の一覧については 347番の歌のページを、「もがな」という願望の連語を使った歌の一覧については 54番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/06 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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