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       返し 近院右大臣  
737   
   今はとて  かへす言の葉  拾ひおきて  おのがものから  形見とや見む
          
        近院右大臣は源能有(よしあり)。文徳天皇の皇子で845年生まれ、897年没。没年五十三歳。 
862年従四位上、875年正四位下、877年従三位、890年正三位、896年右大臣。古今和歌集にはこの歌を含めて三首が採られている。

  
今はもう縁が切れたと、お前が返してくる手紙の言の葉を拾って、自分のものながら、それを恋の形見として見ようか、という歌。紅葉を拾うように 「言の葉」を拾うという趣向であろう。この歌は、昔の送った文を 「もう置き所が無い」と藤原因香から言われて返された時の返しである。 "今はとて" は、「今はもう終わりとして」ということで、同じ言葉を使った歌の一覧は 182番の歌のページを参照。元の 736番の因香の歌の「今は かへしてむ」を受けている意味もある。

  "おのがものから" は 「おのが+もの+から」で、 147番の歌のページで一覧している他の歌の 「連体形+ものから」と少し異なっているが、ここでの格助詞「から」は 「〜だけれど」というニュアンスを持っていると見てよいだろう。

  「言の葉」という言葉を使った歌の一覧については 688番の歌のページを、「形見」という言葉を使った歌の一覧は 743番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/08 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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