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       題しらず 読人知らず  
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   心がへ  するものにもが  片恋は  苦しきものと  人に知らせむ
          
        私の心をあの人の心と取り替えて、片思いはどんなに辛いものか教えてあげたい、という歌。呪術的な匂いもするが、その線で考えると、恋の成就を願うならともかく、そんなことを願ってどうする、という気がしないでもない。物語的に言えば、魂替えをしたところ、逆に相手から見た自分の魅力のなさがわかってガッカリするというパターンもありうる。

  "するものにもが" は 「する+もの+に+もが」で、「もが」は願望を表す終助詞。 
「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0) でも指摘されているように、古今和歌集の中では 54番の歌のように 「もが+な」として多く使われている。他に 「もが」のかたちで使われている例としては、1003番の忠岑の「古歌にくはへてたてまつれる長歌」に「老いず死なずの 薬もが」というものがある。

 
( 2001/12/06 )   
(改 2003/12/23 )   
 
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