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       題しらず 読人知らず  
671   
   風吹けば  浪うつ岸の  松なれや  ねにあらはれて  泣きぬべらなり
          
        この歌は左注に「このうたは、ある人のいはく、柿本の人麿がなり」とある。

  
風が吹くと浪が打ち寄せる岸の松が根をあらわにしているように、人目もはばからず泣いてしまいそうだ、という歌。 「根−音」が掛けられていて、「音を上げて泣く=声を出して泣く」という表現がベースにある。 「音に鳴く」という表現を使った歌の一覧は 150番の歌のページを参照。 「松」には 
「待つ」が薄く掛かっているようである。

  "風吹けば" ではじまる歌としては、伊勢物語の第二十三段で有名な 994番の読人知らずの「風吹けば 沖つ白浪 たつた山」という歌のほか、次の躬恒や忠岑の歌がある。

 
304   
   風吹けば   落つるもみぢ葉  水清み  散らぬ影さへ  底に見えつつ
     
601   
   風吹けば   峰にわかるる  白雲の  絶えてつれなき  君が心か
     
        また、上記のものも含めて 「風吹く」という言葉を使った歌を集めてみると次の通り。 「吹く風」という言葉を使った歌については 99番の歌のページにまとめてある。「春風/秋風」については 85番の歌のページを、「山風」については 394番の歌のページを参照。

 
     
304番    風吹けば  落つるもみぢ葉 水清み  凡河内躬恒
427番    風吹くごとに  浮き沈む玉  紀貫之
589番    風吹くごとに  物思ひぞつく  紀貫之
601番    風吹けば  峰にわかるる 白雲の  壬生忠岑
671番    風吹けば  浪うつ岸の 松なれや  読人知らず
929番    風吹けど  ところも去らぬ 白雲は  凡河内躬恒
994番    風吹けば  沖つ白浪 たつた山  読人知らず


 
        「〜なれや」という表現を使った歌の一覧については 225番の歌のページを、「べらなり」という言葉を使った歌の一覧については 23番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/06 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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