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       題しらず 読人知らず  
672   
   池にすむ  名ををし鳥の  水を浅み  かくるとすれど  あらはれにけり
          
        池にすむオシドリが水が浅くて潜りきれないように、恋の噂に名が出るのが惜しいので隠れようとしたけれど、うまくゆかず世間に知られてしまった、という歌。

 "をし鳥" (オシドリ)に 「惜し(をし)」を掛けている。 「名を惜し」という歌には、653番の小野春風の「花薄 穂にいでて恋ひば 名を惜しみ」という歌などがあるが、ここでは "名ををし鳥" という言い回しが印象的である。 "水を浅み" と同じ 「〜を〜み」というかたちを持つ歌については、497番の歌のページを参照。どこかユーモラスな歌で、似たような雰囲気を持つものに次の読人知らずの歌がある。

 
675   
   君により  我が名は花に  春霞  野にも山にも  立ち満ちにけり
     
        また、他の鳥と池の恋歌としては、木の実や草を主食としてあまり深く潜らないオシドリに対し、深く潜ることで有名な 「にほ鳥」(=カイツブリ)を使った次のような躬恒の歌がある。

 
662   
   冬の池に    すむにほ鳥の   つれもなく  そこにかよふと  人に知らすな
     

( 2001/08/17 )   
(改 2004/01/07 )   
 
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