Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十七

       同じ滝をよめる 凡河内躬恒  
929   
   風吹けど  ところも去らぬ  白雲は  世をへて落つる  水にぞありける
          
        詞書の 「同じ滝」とは、一つ前の 928番の忠岑の歌の詞書にある 「比叡の山なる音羽の滝」のことである。風が吹いても場所を移動しない白雲は、昔から落ち続ける水であったのだ、という歌。 
「滝」という言葉を使わずに 「落つる水」と表わしている点が目を引く。

  「ところも去らぬ」という表現は、 324番の「白雪の ところもわかず 降りしけば」という紀秋岑の歌を思い出させ、「世をへて落つる」という部分は、924番の承均法師の「世をへて見れど とる人もなき」という 「吉野の滝」の歌を連想させる。 「経(ふ)」という言葉が使われている歌の一覧は 596番の歌のページを参照。

  また、先に 「白雲」と出してから 「水」に揺り戻しているところは、290番の読人知らずの「吹く風の
 色のちぐさに 見えつるは」という歌などを思い出させる。 「風吹く」という言葉を使った歌の一覧については 671番の歌のページを、「白雲」を使った歌の一覧については 30番の歌のページを参照。
 「〜にぞありける」という表現を使った歌の一覧は 204番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/04 )   
(改 2004/03/09 )   
 
前歌    戻る    次歌