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       題しらず 平貞文  
670   
   枕より  また知る人も  なき恋を  涙せきあへず  もらしつるかな
          
     
  • せきあへず ・・・ 堰き止められずに
  
枕より他に知る人のいないこの恋のことを、悲しみのあまり我慢できなかった涙と共に漏らしてしまった、という歌。

  歌の前半だけを見ると、また 504番の「枕のみこそ 知らば知るらめ」のような歌か、と思うが、ここでは "もらしつるかな" がメインで、つい人に言ってしまったという歌である。涙をつい流してしまうという歌としては、809番の菅野忠臣(すがののただおむ)の「心弱くも 落つる涙か」という歌が連想されるが、その歌は恋歌五にあって、また状況がこの歌とは少し違う。

  「せきあへず」という言葉を使った歌としては、安倍清行の歌に対する 557番の小野小町の返しに「我はせきあへず たぎつ瀬なれば」という歌がある。 「あへず」という言葉を使った歌の一覧については 7番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/11 )   
(改 2004/01/12 )   
 
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