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       題しらず 読人知らず  
514   
   忘らるる  時しなければ  あしたづの  思ひ乱れて  音をのみぞ鳴く
          
     
  • あしたづ ・・・ 鶴
  
忘れていられる時がないので、私はただ思い乱れて鶴のように声を上げて泣くばかりです、という歌。この歌は恋歌一に置かれているが、恋歌五には 「あしたづの音に なかぬ日はなし」という 779番の兼覧王(かねみのおおきみ)の歌もある。  「音に鳴く」という表現を持つ歌の一覧は 150番の歌のページを参照。

  「思ひ乱る」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
485番    かりこもの  思ひ乱れ  読人知らず
514番    あしたづの  思ひ乱れ  読人知らず
934番    海人の刈る藻に  思ひ乱るる  読人知らず
1001番   かくなわに  思ひ乱れ  読人知らず
1002番   春霞  思ひ乱れ  紀貫之


 
        "忘らるる" という言葉は、「忘ら+るる」で、四段活用の「忘る」の未然形+助動詞「る」の連体形であるが、この歌の場合、「る」は可能を表わす。それに対して 825番の「忘らるる 身を宇治橋の」という歌の場合は同じ言葉だが 「る」は受身を表わすので少しややこしい。

  また、 "時しなければ" というフレーズをもつものとしては、414番に躬恒の「消えはつる 時しなければ 越路なる」という歌がある。 「鶴」を詠った歌の一覧は 919番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/26 )   
(改 2004/02/12 )   
 
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