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       寛平の御時、うたたてまつりけるついでにたてまつりける 大江千里  
998   
   あしたづの  ひとりおくれて  鳴く声は  雲の上まで  聞こえつがなむ
          
     
  • あしたづ ・・・ 鶴
  詞書は 「寛平の御時(=宇多天皇の時代)に歌を献上する時に加えて献上した」歌ということ。 
「うたたてまつりける」とは、894年四月に献上した 「句題和歌」だと言われている。

  歌の内容は、
自分が同格と思っている人たちはみんな出世して上の方に行ってしまった、願わくばこの嘆きが雲の上まで伝わり届き、お恵みをいただきたい、ということ。千里は901年に中務少丞(しょうじょう)となったが、それは従六位上にあたる。

  「あしたづ」という言葉を使った歌はこの歌を含めて四首あるが、その中でもこの歌と関連させて見たいのは次の読人知らずの歌である。 「鶴」を詠った歌の一覧は 919番の歌のページを参照。

 
514   
   忘らるる  時しなければ  あしたづの   思ひ乱れて  音をのみぞ鳴く  
     
        この読人知らずの歌は恋歌なので 「忘らるる 時しなければ」というのは自分が忘れることができないということだが、千里の歌は自分が忘れられたくないということである。また 「鶴」と 「雁」との違いはあるが、次の読人知らずの恋歌はどことなくこの千里の歌のイメージに近い。

 
819   
   葦辺より  雲ゐをさして  行く雁の  いや遠ざかる    我が身かなしも  
     

( 2001/11/19 )   
(改 2004/03/16 )   
 
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