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       かりのこゑを聞きて越にまかりにける人を思ひてよめる 凡河内躬恒  
30   
   春くれば  雁かへるなり  白雲の  道ゆきぶりに  ことやつてまし
          
     
  • 道ゆきぶり ・・・ 道中のついで
  • ことやつてまし ・・・ 言伝をしたいものだ
  詞書は、「雁の鳴く声を聞いて越の国に赴任している人を思って詠んだ」歌ということ。
春が来れば、雁が帰ってゆく、その白雲の道中のついでに言伝をしたいものだ、という歌。  凡河内躬恒は生没年不詳。894年甲斐権少目、907年丹波権大目、911年和泉権掾。

  「春」に 「雁」を合わせることは 31番の伊勢の歌や 465番の在原滋春の物名の歌にもある。 「白雲」は 「立つ」から 「発つ」のイメージに合わせたものであろう。 「白雲」という言葉が使われている歌には次のようなものがある。

 
     
30番    白雲  道ゆきぶりに ことやつてまし  凡河内躬恒
59番    山のかひより  見ゆる白雲  紀貫之
191番    白雲  羽うちかはし 飛ぶ雁の  読人知らず
371番    白雲  たちなむのちは なに心地せむ  紀貫之
379番    白雲  こなたかなたに 立ち別れ  良岑秀崇
380番    白雲  八重にかさなる をちにても  紀貫之
461番    白雲  いかにせよとか 晴るる時なき  紀貫之
601番    白雲  絶えてつれなき 君が心か  壬生忠岑
856番    白雲  たつ野とはやく なりにしものを  読人知らず
929番    風吹けど  ところも去らぬ 白雲  凡河内躬恒
945番    白雲  絶えずたなびく 峰にだに  惟喬親王


 
        また、"ことやつてまし" は、ざっと読むと 「言・やって・まし」に見えるが、「言+や+つて+まし」で、「伝つ(つつ)」の未然形に反実仮想の助動詞「まし」がついたかたちである。 「まし」が使われている歌の一覧は 46番の歌のページを参照。

  帰る雁を見送って思いを述べている歌としては、羇旅歌に次の読人知らずの歌がある。

 
412   
   北へ行く    雁ぞ鳴くなる   つれてこし  数はたらでぞ  かへるべらなる
     

( 2001/12/06 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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