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       みちのくにへまかりける人によみてつかはしける 紀貫之  
380   
   白雲の  八重にかさなる  をちにても  思はむ人に  心へだつな
          
     
  • をち ・・・ 遠く
  
白雲が八重に重なるような遠い場所に行っても、あなたを思うこの心を分け隔てしないでほしい、という歌。 "思はむ人" は相手を思う自分のことを指している。別に雲があろうがなかろうが、遠く離れた人の姿が見えるわけではないが、空がつながっている感じが遮られるという思いがあるのだろう。 368番の「心ばかりは せきなとどめそ」という小野千古母の歌が思い出される。また、一つ前の 379番の良岑秀崇の歌にも「白雲の こなたかなたに 立ち別れ」という歌がある。 「白雲」を使った歌の一覧は 30番の歌のページを参照。

  また、902番の在原棟梁の歌に「白の 八重降りしける かへる山」という「老い」を詠ったものがあるが、この貫之の歌と並べてみると「白−白」「別れ−老い」という対比が 「八重」という言葉で接点を持っている二つのねじれた輪のようで面白い。

 
( 2001/10/22 )   
(改 2004/03/13 )   
 
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