Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十三

       題しらず 小野小町  
635   
   秋の夜も  名のみなりけり  あふと言へば  ことぞともなく  明けぬるものを
          
     
  • ことぞともなく ・・・ あっけなく
  
秋の夜というのも言葉だけのこと、恋人に逢えたと思ったら、あっけなく夜が明けてしまったところを見ると、という歌。 "秋の夜も 名のみなりけり" というのは 「秋の夜長」のことを指している。さらに "ことぞともなく" (=事ぞともなく)の 「こと」を同音の 「言」で 「名−言ふ−言(葉)」とつなげているようである。同じ 「秋」でも恋歌五の 824番の読人知らずの 「秋と言へば」という歌では「我をふるせる 名にこそありけれ」と、「飽き」られてしまうという意味で使われている。

  秋の長い夜も冬を越して春になると、今度は日が長くなってゆく。次の源宗于(むねゆき)の歌は、そこからの発想の歌であろうか。

 
624   
   あはずして  今宵明けなば  春の日の    長くや 人を  つらしと思はむ
     
        「〜と言へば」という表現を使った歌には次のようなものがある。

 
     
635番    あふと言へば  ことぞともなく 明けぬるものを  小野小町
676番    知ると言へば  枕だにせで 寝しものを  伊勢
680番    君と言へば  見まれ見ずまれ 富士の嶺の  藤原忠行
824番    秋と言へば  よそにぞ聞きし あだ人の  読人知らず
900番    さらぬ別れも  ありと言へば  業平朝臣母
1054番    我が身に糸の  よると言へば  久曽


 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/02/23 )   
 
前歌    戻る    次歌