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       朱雀院の女郎花あはせによみてたてまつりける 紀貫之  
232   
   たが秋に  あらぬものゆゑ  女郎花  なぞ色にいでて  まだきうつろふ
          
     
  • あらぬものゆゑ ・・・ というわけでもないのに
  • なぞ ・・・ どうして
  • まだき ・・・ 早くも
  この歌は「秋−飽き」の掛詞と、「うつろふ」の二つの意味 (花が退色する/心変りをする)を混ぜてオミナエシに呼びかけている歌である。歌の意味は、
秋だからといって、飽きたと言っているものは誰もいないのに、オミナエシよ、どうしてお前は人目にもわかるように、さっさと心変りしてしまうのか、ということ。

  この歌の場合、 "ものゆゑ" は 「〜でないのに」という逆接の意味を表す。この歌の一つ前にある藤原定方の次の歌でも同じオミナエシと 「ものゆゑ」が使われているので合わせて見ておきたい。

 
231   
   秋ならで  あふことかたき  女郎花   天の河原に  おひぬ ものゆゑ  
     
        また、ついでに 「ものゆゑ」を使った以下の読人知らずの三つの歌も一緒に読んでおきたい。 「ものゆゑ」という言葉を使った歌の一覧は 100番の歌のページにもまとめてある。

 
100   
   待つ人も  来ぬ ものゆゑ に  うぐひすの  鳴きつる花を  折りてけるかな
     
528   
   恋すれば  我が身は影と  なりにけり  さりとて人に  そはぬ ものゆゑ  
     
620   
   いたづらに  行きてはきぬる  ものゆゑ に  見まくほしさに  いざなはれつつ
     
        この歌に出てくる 「なぞ」という言葉を使っている歌の一覧は次の通り。

 
     
232番    女郎花  なぞ色にいでて  まだきうつろふ  紀貫之
506番    人知れぬ  思ひやなぞと  葦垣の  読人知らず
529番    かがり火に  あらぬ我が身の  なぞもかく  読人知らず
934番    幾世しも  あらじ我が身を  なぞもかく  読人知らず
1034番    なぞ我が恋の  かひよとぞ鳴く  紀淑人
1037番    なぞ世の中の  玉だすきなる  読人知らず


 
        また、この 「なぞ(何ぞ)」は、382番と 615番の歌に出てくる 「なにぞ」と同じ言葉である。似たような言葉に 「など/などか」というものもあり、その一覧については 155番のページを参照。

  「まだき」という言葉を使った歌の一覧は 763番の歌のページを、「うつろふ」という言葉を使った歌の一覧については 45番の歌のページを参照。 「色に出づ」という表現を使った歌の一覧は 663番の歌のページを参照。

 
( 2001/08/22 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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