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       題しらず 凡河内躬恒  
663   
   笹の葉に  置く初霜の  夜を寒み  しみはつくとも  色にいでめや
          
        笹の葉の上に置く初霜は夜寒いため、凍りつくが、それが透明で色が出ないように、二人の仲は他人に絶対知られないようにしよう、という歌。

  "しみはつくとも" の 「しみ」には 「凍む」と 「染む」が掛けられ、「染む」から「馴染む」につながっているようにも見える。三句目までは 「しみはつくとも」を導くための序詞と考えられるが、二人が逢えずにいる状態を表しているものとも考えられる。老人になって顔にシミがつくまでずっと、ということではないようである。

  同じ躬恒の歌で "初霜" を使っているものとしては、百人一首にも採られていて有名な 277番の菊の歌があるが、次の甲斐の国への旅上で詠まれた歌は、この歌と言葉遣いがよく似ており、おそらく同根であると思われる。

 
416   
   夜を寒み    置く初霜を   はらひつつ  草の枕に  あまた旅寝ぬ
     
        「初霜」を詠った歌の一覧は 277番の歌のページを、「〜を〜み」というかたちの歌の一覧については 497番の歌のページを参照。

  また 「色に出づ」という表現を使った歌には次のようなものがある。

 
     
232番    女郎花  なぞ色にいでて まだきうつろふ  紀貫之
496番    紅の 末摘花の  色にいでなむ  読人知らず
652番    紫の ねずりの衣  色にいづなゆめ  読人知らず
663番    しみはつくとも  色にいでめや  凡河内躬恒
668番    山橘の  色にいでぬべし  紀友則
949番    あなうの花の  色にいでにけむ  読人知らず
1001番    色にいで  人知りぬべみ 墨染めの  読人知らず


 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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