Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十七

       題しらず 在原業平  
879   
   おほかたは  月をもめでじ  これぞこの  つもれば人の  老いとなるもの
          
     
  • おほかたは ・・・ だいたいのところ (大方は)
  • これぞこの ・・・ それもそうだ
  
今の気持ちをおおまかに言えば、月をも愛でる気がしない、これはつまり、積もれば老いつながるものだからさ、という歌。どこか酔っ払いの戯言のような感じの歌である。 「月を見るのもいいが、年月を重ねれば老いがくるだけ、ならば盃を重ねよう。」という感じか。歌のバランスとしては最後に、
"老いとなるもの
" と 「を」が欲しいような感じもある。

  この歌が酒宴の席でのものである根拠はないが、そう考えると次の藤原基経の四十の賀の際の業平の歌も、どことなく同じ酔っ払いの歌のような気もしてくる。

 
349   
   桜花    散りかひくもれ   老いらくの  来むと言ふなる  道まがふがに
     
        また、"おほかた" という言葉は、古今和歌集の中では訳しにくい言葉の一つであり、それによって歌全体の意味が定まりづらくもなっている。

 
185   
   おほかたの   秋くるからに  我が身こそ  かなしきものと  思ひ知りぬれ
     
388   
   人やりの  道ならなくに  おほかたは   いき憂しといひて  いざ帰りなむ
     
669   
   おほかたは   我が名もみなと  こぎいでなむ  世をうみべたに  みるめすくなし
     
833   
   寝ても見ゆ  寝でも見えけり  おほかたは   空蝉の世ぞ  夢にはありける
     
        これらをまとめ直しておくと次の通り。

 
     
185番    おほかた  秋くるからに 我が身こそ  読人知らず
388番    おほかた  いき憂しといひて いざ帰りなむ  源実
669番    おほかた  我が名もみなと こぎいでなむ  読人知らず
833番    おほかた  空蝉の世ぞ 夢にはありける  紀友則
879番    おほかた  月をもめでじ これぞこの  在原業平


 
( 2001/05/03 )   
(改 2004/02/24 )   
 
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