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       題しらず 読人知らず  
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   我が心  なぐさめかねつ  更級や  をばすて山に  照る月を見て
          
        この心を静めることができない、姥捨山に照る月を見ていると、という歌。

  "をばすて山" は、現在の長野県埴科(はにしなぐん)郡戸倉町あたりにある 「冠着山(かむりきやま)」か、と言われている。大和物語の一五六段にある姥捨ての説話で有名。

  "なぐさめかねつ" は 「なぐさめ+かね+つ」で、下二段活用の 「慰む」の連用形+接尾語「かぬ」の連用形+完了の助動詞「つ」の終止形。 この 「かぬ」が使われている歌の一覧は 491番の歌のページを参照。 "更級や" の 「や」は間投助詞で、「地名+や」というかたちを持つ歌の一覧は 871番の歌のページを参照。 ここに 「姥捨伝説」を見るかどうかは別として、この歌と並べると 
193番の大江千里の「月見れば ちぢにものこそ かなしけれ」という歌が、どこか平坦な感じに見えてしまう。 この歌から九首、月の歌が続く。

 
( 2001/10/17 )   
(改 2004/02/15 )   
 
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