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       題しらず 伊勢  
741   
   ふるさとに  あらぬものから  我がために  人の心の  荒れて見ゆらむ
          
        あなたの心は古里でもないのに、どうして私には荒れ果てて見えるのでしょう、という歌。かつてはあれほど楽しく華やいでいたのに、という含みがある。 "我がために" という部分がわかりづらいが、この 「ため」は理由ではなく、「〜にとって、〜に対して」であると一般的には解釈される。自分の身の置き所がない、というこの歌の感じは 736番の藤原因香の歌の「我が身ふるれば 置きどころなし」と通じるものがあるように思える。

  同じ伊勢の 733番の歌に「わたつみと 荒れにし床を 今さらに」という歌がある。古今和歌集の中で、「荒れたるもの」を詠った歌の一覧は 237番の歌のページを参照。 「人の心」という言葉を使った歌の一覧については 651番の歌のページを参照。

  また、"あらぬものから" の 「ものから」はここでは 「〜だけれど」という逆接表現で、それが使われている歌の一覧は 147番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/04 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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