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       中納言源ののぼるの朝臣の近江の介に侍りける時、よみてやれりける 閑院  
740   
   あふ坂の  ゆふつけ鳥に  あらばこそ  君がゆききを  なくなくも見め
          
     
  • ゆふつけ鳥 ・・・ ニワトリ (木綿付け鳥)
  閑院(かんいん)は生没年および仔細不明。古今和歌集にはあと一首、次の歌が哀傷歌に採られている。

 
837   
   先立たぬ  くいのやちたび  かなしきは  流るる水の  かへり来ぬなり
     
        詞書にある 「中納言源ののぼるの朝臣」(=源昇)は、古今和歌集では 「河原左大臣(かわらのひだりのおおいまうちぎみ)」として二首が採られている源融(とほる)の子。生年は 848年、没年は 918年。 908年に中納言、914年に大納言となった。この歌はその源昇が若い頃、近江介として赴任する時に閑院が詠み贈ったものということである。源昇が近江介になった時期は不明。

  歌の意味は少しわかりづらいが、
もし私が逢坂の関のニワトリであったとしたら、あなたの行き来する姿を鳴きながら(=泣きながら)でも見ようと思うのですが、ということ。別れるのに見送れない事情での歌ということか。あるいは古今和歌集の配列的に見ると、近江に行って他の女の所に通い、朝帰りするあなたの姿を泣きながら見ようものを、という感じか。

  この歌の"あらばこそ" は、783番の小野貞樹の「人を思ふ 心の木の葉に あらばこそ」と同じ 
「未然形+ばこそ」で、反語を表している。"見め" は 「見+め」で、「見る」の未然形+意志を表わす助動詞「む」の已然形。 「こそ」からの係り結びを受けている。

  「あふ坂」を詠った歌の一覧は 374番の歌のページを、 「ゆふつけ鳥」を詠った歌の一覧は 995番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/14 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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