Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十四

       題しらず 読人知らず  
709   
   玉かづら  はふ木あまたに  なりぬれば  絶えぬ心の  うれしげもなし
          
     
  • 玉かづら ・・・ つる草の美称
  
つる草が多くの木に這うように、あなたはいろいろな人のところに行くようになったので、まめに来てくれる気持ちも嬉しくはありません、という歌。 706番の読人知らずの「おほぬさの ひくてあまたに なりぬれば」という歌の玉かづらバージョンである。 「這ふ」には 「夜這ふ」というイメージが重ね合わされているようにも感じられる。

  「這ふ」という言葉を使った他の歌としては、秋歌下に置かれている 262番の貫之の歌に「ちはやぶる 神のいがきに はふくずも」という歌があり、つる草関係でいえば 702番の「梓弓 ひき野のつづら 末つひに」という歌もあり、「絶えぬ心」ということでは、703番の「ことしげくとも 絶えむと思ふな」という 「夏引きの手引きの糸」の歌がある。また、この歌は 699番の読人知らずの「なみに思はば
 我が恋めやは」という歌からの距離を考えさせられる歌でもある。

  「うれし」という言葉を使った歌には次のようなものがある。 「かなし」については 578番の歌のページを参照。

 
     
399番    別るれど  うれしくもあるか 今宵より  凡河内躬恒
709番    絶えぬ心の  うれしげもなし  読人知らず
712番    人の言の葉  うれしからまし  読人知らず
865番    うれしき  何につつまむ 唐衣  読人知らず
1003番    人麿こそは  うれしけれ  壬生忠岑


 
( 2001/11/15 )   
(改 2004/03/07 )   
 
前歌    戻る    次歌