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       題しらず 紀貫之  
606   
   人知れぬ  思ひのみこそ  わびしけれ  我がなげきをば  我のみぞ知る
          
        人知れぬ思いはというものはわびしいものである、自分の嘆きは自分しかわからない、という歌。シンプルな歌だが、 "のみ" を二回使って、嘆きの効果を上げている。 「わびし」という言葉を使った歌の一覧は 8番の歌のページを参照。

  "なげき" という言葉は、1055番からはじまる三つの誹諧歌で 「嘆き−投げ木」として使われているが、恋歌の中では 「なげき」を使った次の二つの読人知らずの歌がどちらも 「つれもなき人」を出だしとしているのが面白い。

 
486   
   つれもなき  人をやねたく  白露の  置くとは なげき   寝とはしのばむ
     
521   
   つれもなき  人を恋ふとて  山彦の  答へするまで  なげき つるかな
     
        「人知れぬ恋の思ひ」を詠った歌の一覧は 496番の歌のページを参照。 「〜こそ〜をば」というかたちを持った歌の一覧は 278番の歌のページを参照。

 
( 2001/09/18 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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