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       題しらず 在原元方  
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   立ち返り  あはれとぞ思ふ  よそにても  人に心を  沖つ白浪
          
     
  • あはれ ・・・ いとおしい
  
沖の白浪のように繰り返し、いとおしく思える、近くには行けないけれど、この心はあの人のものである、という歌。

 "立ち返り" という言葉は 120番の躬恒の歌などにも使われていて、「引き返す」という意味もあり、同じ元方の 626番の「うらみてのみぞ 立ち返りける」はその意味であるが、ここでは 「繰り返す」と見た方が自然だろう。 「あはれ」という言葉を使った歌の一覧は 939番の歌のページを参照。

  "沖つ白浪" は、はじめの "立ち返り" との縁語であり、沖に遠く離れているということから意味的に "よそにても" に掛かり、最後に 「沖−置き」の掛詞で 「人に心を置く」ということを言って、歌全体に万遍なく関係しているが、最後の駄洒落での終わり方は微妙なところである。

  「人に心を置く」とは 「人に思いをかける」ということで、589番の貫之の「露ならぬ 心を花に 置きそめて」という歌でも使われている。 「よそ」という言葉を使った歌の一覧については 37番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/29 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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