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       寛平の御時、菊の花をよませたまうける 藤原敏行  
269   
   久方の  雲の上にて  見る菊は  天つ星とぞ  あやまたれける
          
        詞書は 「寛平の御時(=宇多天皇の時代)に菊の花を詠ませた」歌ということ。

  左注に「このうたは、まだ殿上許されざりける時にめしあげられてつかうまつれるとなむ」(この歌はまだ殿上が許されない時期に、特に召し上げられて詠んだと言われる)とある。

  歌の意味は、
殿上の雲の上で見る菊は、空の星かと見間違えてしまいました、ということ。シンプルではあるが、菊が輝く様子を美しく詠っている歌である。

 "雲の上" とは、その本来まだ自分が上がるべき場所でないところから見たことを指している。 この歌と同じような意味で 「雲の上」という言葉を使った歌に、998番の「雲の上まで 聞こえつがなむ」という大江千里の歌がある。

  「久方の」という枕詞を使った歌の一覧は次の通り。

 
     
84番    久方の  光のどけき 春の日に  紀友則
173番    久方の  天の河原に 立たぬ日はなし  読人知らず
174番    久方の  天の河原の 渡し守  読人知らず
194番    久方の  月の桂も 秋はなほ  壬生忠岑
269番    久方の  雲の上にて 見る菊は  藤原敏行
334番    久方の  あまぎる雪の なべて降れれば  読人知らず
452番    久方の  月吹きかへせ 秋の山風  景式王
751番    久方の  天つ空にも すまなくに  在原元方
968番    久方の  中におひたる 里なれば  伊勢
1002番    久方の  昼夜わかず つかふとて  紀貫之


 
( 2001/09/26 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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