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       題しらず 読人知らず  
198   
   秋萩も  色づきぬれば  きりぎりす  我が寝ぬごとや  夜はかなしき
          
     
  • きりぎりす ・・・ コオロギ
  
秋萩が色づいてくると、コオロギは私が寝付かれないのと同じように、夜を切なく思っているのか、という歌。 「鳴く−泣く」という言葉を使っていないのが特徴で、だからといって 「きりぎりす」は鳴いていないわけではなく、鳴いているから "我が寝ぬごとや  夜はかなしき" と感じるわけである。これはもちろん字数の制約ということもあるが、表現の仕方ととらえてみたい。

  「秋萩が色づく」というと、220番の読人知らずの「秋萩の 下葉色づく 今よりや」という歌が連想され、ここでも萩の葉について言っていると見てよいだろう。これは秋が深まる譬えで、飾りといえば飾りだが、夜に聞こえる虫の音という色のないところに合わせてきているのが効果的である。

  ここで古今和歌集の中で 「(秋)萩」が詠われている歌をまとめてみると次の通り。

 
     
198番    秋萩も 色づきぬれば  きりぎりす  読人知らず
211番    萩の下葉  うつろひにけり  読人知らず
216番    秋萩に うらびれをれば  あしひきの  読人知らず
217番    秋萩を しがらみふせて  鳴く鹿の  読人知らず
218番    秋萩の 花咲きにけり  高砂の  藤原敏行
219番    秋萩の 古枝に咲ける  花見れば  凡河内躬恒
220番    秋萩の 下葉色づく  今よりや  読人知らず
221番    物思ふ宿の  の上の露  読人知らず
222番    の露 玉にぬかむと  とればけぬ  読人知らず
223番    秋萩の 枝もたわわに  置ける白露  読人知らず
224番    萩が花 散るらむ小野の  露霜に  読人知らず
366番    すがるなく 秋の萩原  朝たちて  読人知らず
397番    秋萩の 花をば雨に  濡らせども  紀貫之
694番    宮城野の もとあらの小萩  露を重み  読人知らず
781番    秋萩の うつりもゆくか  人の心の  雲林院親王


 
        「きりぎりす」を詠った歌の一覧は 244番の歌のページを、「かなし」という言葉を使った歌の一覧については、578番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/05 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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