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       これさだのみこの家の歌合せのうた 藤原敏行  
197   
   秋の夜の  明くるも知らず  鳴く虫は  我がごとものや  かなしかるらむ
          
        秋の夜が明けるのも知らずに鳴く虫は、自分と同じように物悲しいのか、という歌。

 "秋の夜の  明くるも知らず" という部分には、秋の夜は長いのにそれをずっと鳴き通して朝まで、というニュアンスが含まれている。続く読人知らずの歌も虫を「我が身のように〜なのか」としている点ではこの歌と同じ趣向であり、そこでも 「かなしい」という言葉が使われている。

 
198   
   秋萩も  色づきぬれば  きりぎりす  我が寝ぬごとや    夜はかなしき  
     
        「かなしい」という言葉を使った歌は古今和歌集の中に多くあるが、その中でも秋の虫の音を 「かなしい」と詠った歌としてはこれらの他に、186番の「虫の音聞けば  まづぞかなしき」、200番の「松虫の音ぞ  かなしかりける」というものがある。 「かなし」という言葉を使った歌の一覧については、578番の歌のページを参照。

  また、578番同じ敏行のホトトギス・バージョンがあり、この歌と比べてみると内容はほとんど同じであるにもかかわらず、それは夏歌でなく恋歌二に置かれている。

 
( 2001/12/05 )   
(改 2004/02/23 )   
 
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