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       題しらず 読人知らず  
694   
   宮城野の  もとあらの小萩  露を重み  風を待つごと  君をこそ待て
          
     
  • もとあら ・・・ 根元や幹の方に葉や枝がまばらである様
  
宮城野の元がまばらな小ぶりな萩(はぎ)が、露が重いので、それを払う風を待つように、私はあなたを待っています、という歌。 「もとあらの小萩」の実体がよくわからないものの、姿のよい歌である。 "君をこそ待て" の 「待て」は 「こそ」からの係り結びで 「待つ」の已然形。

  露が重くてしなだれる萩を、逢えずに涙でうなだれている自分の姿に合わせている。小萩は風を待つが、自分は "君をこそ待て" という言い方が、無駄がなく、スマートで、かつ情に訴える力を持っている。宮城野は現在の宮城県仙台市であると言われ、次の「みちのくうた」にも露と共に詠まれている。

 
1091   
   みさぶらひ  みかさと申せ  宮城野の   この下露は  雨にまされり
     
        また、萩と露を詠った歌としては次のような読人知らずの歌もある。 「萩」を詠った歌の一覧については 198番の歌のページを参照。

 
223   
   折りてみば  落ちぞしぬべき  秋萩の   枝もたわわに  置ける 白露  
     
        "露を重み" と同じ 「〜を〜み」というかたちを持つ歌の一覧は 497番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/12 )   
(改 2004/01/19 )   
 
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