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       山寺にまうでたりけるによめる 紀貫之  
117   
   宿りして  春の山辺に  寝たる夜は  夢の内にも  花ぞ散りける
          
        春の山辺の宿に泊まって眠る夜は、夢の中にも花が舞い散る、という歌で、"夢の内" を詠いながら夢の外まで、"夜" を詠いながら昼間の様子まで、うまく暗示している歌である。詞書の 「山寺」は歌の内容と直接の係わり合いはなく、山寺に詣でたことよりも 「春の山辺」に泊まれたことを楽しんでいるような感じがあるが、「寺」とのつながりで、散華(さんげ:=仏の供養のために花びらをまくこと)のイメージを重ねているようにも見えなくはない。

  "夢の内" という言葉を使った歌としては他に恋歌一に、次の読人知らずの歌がある。

 
525   
   夢の内に   あひ見むことを  たのみつつ  くらせる宵は  寝む方もなし
     
        また、この歌は二つ前の 115番の「梓弓  はるの山辺を  越えくれば」という歌と並べてみると、「春の山辺−花ぞ散りける」という部分が同じである。さらに古今和歌集の中で 「花ぞ散りける」と結ばれている歌を調べてみると、

 
     
9番    花なき里も  花ぞ散りける  紀貫之
115番    道もさりあへず  花ぞ散りける  紀貫之
117番    夢の内にも  花ぞ散りける  紀貫之
363番    山下風に  花ぞ散りける  紀貫之
446番    匂ひもあへず  花ぞ散りける  紀利貞


 
      となり、一つを除いてすべて貫之の歌である。よほど使い慣れた表現であったのだろう。

 
( 2001/11/29 )   
(改 2003/10/21 )   
 
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