Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻二

       さくらの散るをよめる 凡河内躬恒  
86   
   雪とのみ  降るだにあるを  桜花  いかに散れとか  風の吹くらむ
          
        そのままでもまさに雪が降るようであるものを、この桜に、これ以上どう散れということで風が吹くのだろうか、という歌。

  雪と降る桜も、それを巻く風も自分のコントロール外で、手が出せないという気持ちがよく表わされており、その点で 87番の貫之の「風は心に まかすべらなり」という歌に通じるものがある。 「だに」という言葉を使った歌の一覧は 48番の歌のページを参照。

  この歌は 「降る/散る/吹く」という動詞の並びに味があり、それらが整然と 「雪/花/風」に合わされていて、しかも退屈な感じがしない。

 
       
        また、この歌の "いかに散れとか" と似た感じの言葉を使っている歌に、次の恋歌五の読人知らずの歌がある。

 
777   
   来ぬ人を  待つ夕暮れの  秋風は  いかに吹けばか    わびしかるらむ  
     
        どちらも 「〜か〜らむ」という形をしているが、「吹く」という動詞の位置の違いに注目したい。

 
( 2001/11/21 )   
(改 2004/03/07 )   
 
前歌    戻る    次歌