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       みちのくのうた 読人知らず  
1087   
   阿武隈に  霧立ちくもり  明けぬとも  君をばやらじ  待てばすべなし
          
     
  • すべなし ・・・ どうしようもない
  
阿武隈川に霧が立ち、あたりがくもり、夜が明けたとしても、あなたを行かせたくはありません、一度待つ身となれば、もうどうしようもありませんから、という歌。

  この歌から巻二十の最後までの十四首が 「東歌」という分類になっている。最後の 1100番の歌を除いて東国の地名の入った歌となっているが、
「古今和歌集全評釈(下)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-208753-7) によれば、これらは 「東遊(あずまあそび)」という歌謡の歌であり、「東国で作られた歌をそのまま採集したものではない」とのことである。 "阿武隈" は、現在の宮城県亘理(わたり)郡亘理(わたり)町を河口とする阿武隈川を指す。

  "明けぬ" の 「ぬ」は、1071番の「明けこの夜は」などと同じ完了の助動詞「ぬ」の終止形。 
"霧立ちくもり" という言葉からは349番の「桜花 散りかひくもれ」という業平の歌が思い出される。

 
( 2001/11/19 )   
(改 2004/03/16 )   
 
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