Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻四

       題しらず 読人知らず  
176   
   恋ひ恋ひて  あふ夜は今宵  天の河  霧立ちわたり  明けずもあらなむ
          
        七夕の織女の気持ちを詠った歌で、一年恋い続けてようやく逢う今宵は、天の川の霧が立ちこめ、夜が明けないようであって欲しい、という意味。朝が来なければ牽牛と別れずにいられるのに、ということである。それに対して古今和歌集の配列では、続けて 177番の友則の「渡りはてねば 
明けぞしにける」という牽牛の失敗の歌を置いていて、少し意地悪なような、滑稽なような演出をしている。

  この歌で "霧立ちわたり 明けずもあらなむ" と言っているのは、霧が夜明けになったことを知らせないで欲しいということだが、次の 「みちのくのうた」では、朝霧が立って夜が明けたとしてもあなたを行かせたくない、と詠っていて、しっとりとした情念を感じさせる。

 
1087   
   阿武隈に  霧立ちくもり    明けぬとも   君をばやらじ  待てばすべなし
     

( 2001/11/19 )   
(改 2004/02/23 )   
 
前歌    戻る    次歌