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       比叡の山なる音羽の滝を見てよめる 壬生忠岑  
928   
   落ちたぎつ  滝の水上  年つもり  老いにけらしな  黒き筋なし
          
     
  • たぎつ ・・・ 水が激しく流れる
  • 水上 ・・・ 水源
  詞書にある 「比叡の山なる音羽の滝」とは、現在の京都府京都市左京区修学院音羽谷あたりのことと言われている。
落ちて流れる激しい滝の水上は、年が積もって老いたようだ、黒い筋が見えずに真っ白だ、という歌。

  "水上" の 「かみ」に 「髪」を掛けて、みごとな白髪のようであるとしている。さらに 「みな」に 
「皆」を掛けていると見る説もある。比叡山というイメージに合わないが、長い髪をさらしているという感じからすると、926番の伊勢の歌の 「山姫」などが想像される。また、"老いにけらしな" という言葉からは、59番の貫之の「桜花 さきにけらしな」という歌が思い出される。 「同じ滝をよめる」という躬恒の歌がこの後に続き、そちらでも 「音羽の滝」の古さを詠っている。

 
929   
   風吹けど  ところも去らぬ  白雲は  世をへて落つる   水にぞありける
     
        古今和歌集の配列から言えば、これら二つの 「音羽の滝」の歌は、次の在原行平と在原業平の歌の 「布引の滝」のペアと比較することができる。

 
922   
   こき散らす  滝の白玉  拾ひおきて  世の憂き時の  涙にぞかる
     
923   
   ぬき乱る  人こそあるらし  白玉の  まなくも散るか  袖のせばきに
     

( 2001/12/04 )   
(改 2004/02/04 )   
 
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