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       題しらず 読人知らず  
895   
   老いらくの  来むと知りせば  門さして  なしと答へて  あはざらましを
          
     
  • 老いらく ・・・ 老い
  • 門さして ・・・ 門を閉ざして
  
このように「老い」がやって来ると知っていたなら、門を閉ざして、「いない」と言って会わないようにしたものを、という歌。

  この歌には 「このみつのうたは、昔ありける三人の翁のよめるとなむ」という左注が付いている。 「このみつのうた」とは、 893番と 894番とこの歌の三首を指す。それが 「昔存在した三人の老人が詠んだという」伝承があったということで、思わせぶりでいかにも怪しげな注である。

  「老い」が人のようにやってくるという歌としては、349番の業平の「老いらくの 来むと言ふなる 道まがふがに」という歌が有名である。またこの歌の 「〜と答へて〜ましを」という口ぶりは、伊勢物語の第六段の、

  白玉か  なにぞと人の  問ひし時  露と答へて 消なましものを

という歌を連想させ、 "知りせば" という言葉からは 552番の小野小町の「夢と知りせば 覚めざらましを」という歌も思い出される。 「〜ざらまし」という言葉を使った歌の一覧は 465番の歌のページを、「〜ましを」という言葉を使った歌の一覧は 236番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/01 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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