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       題しらず 読人知らず  
798   
   我のみや  世をうぐひすと  なきわびむ  人の心の  花と散りなば
          
        私だけが、物憂く悲しいと泣いて苦しむのでしょうか、あなたの心が花と散ってしまったので、という歌。 422番の藤原敏行の「うくひすとのみ 鳥の鳴くらむ」という物名の歌との違いが気になる。 
「世を憂」というために 「世をう〜」という表現を使うのは一つの型であり、次のような歌で使われている。似たような表現で 「身をう〜」というものについては 806番の歌のページを参照。

 
     
669番    世をうみべたに  みるめすくなし  読人知らず
798番    世をうぐひすと  なきわびむ  読人知らず
983番    世をうぢ山と  人は言ふなり  喜撰法師


 
        つまり同じ 「うぐひす」でも、敏行の物名が 「「憂く干ず(=嫌だ、乾かない)」とのみ...」と鳥のセリフとしているのに対し、この歌では 「世を憂−の−うぐひす−のように」という感じだろうか。ただこの歌の場合も上記のような例にとらわれずに、歌単体で見れば 「「物憂く思って涙が乾かない」と泣く」と言っているようにも見える。 「のみや」という言葉を使った歌の一覧は 55番の歌のページを参照。

  また、"人の心" は恋の相手を指し、それに対して "我のみや" と言っていると見れば、この歌の 
「世」とは、本居宣長が「古今和歌集遠鏡」でこの歌について 「
世は男女の間をいふ」と言っている通り、二人の仲のことを指していると考えられる。 「人の心」という言葉を使った歌の一覧については 651番の歌のページを参照。 「動詞+わぶ」というかたちが使われている歌の一覧は 152番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/21 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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