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       題しらず 読人知らず  
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   人の身も  ならはしものを  あはずして  いざこころみむ  恋ひや死ぬると
          
     
  • ならはしもの ・・・ 慣れるもの
  
人の体は環境に慣れるものだと言うが、試してみようか、逢わずにいると恋死にするかどうか、という歌。 「身」と 「こころ」の対が隠し味になっているようである。

 "恋ひや死ぬると" という部分は 「恋死ぬかと」というようにも見えるが、古今和歌集の中では 「恋死ぬ」ということは 「恋によって死ぬ」ということを表しているので、「恋死ぬ」の間に疑問の助詞「や」が入っていると見るのが自然である。似たような例に 677番の歌の 「恋ひや渡らむ」というものがある。

  ただ、この歌の前半を 「逢わないでいるとそれが平気になるというので」という意味にとると後半と合わないので、「慣れるというけれど、とてもそうは思えない」というニュアンスで見る必要があるだろう。逢えないことを、"あはずして  いざこころみむ"と強がってみるけれども、このままでは恋死してしまう、ということを詠った歌である。 「恋死ぬ」という歌の一覧は 492番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/26 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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