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       うつせみ 在原滋春  
424   
   浪の打つ  瀬見れば玉ぞ  乱れける  拾はば袖に  はかなからむや
          
        「なみのウツ セミればたまぞ」の部分に 「うつせみ」が含まれている。 「うつせみ」は現世ということ。 「空蝉」という言葉を使った歌の一覧は 73番の歌のページを参照。

  歌の意味は、
浪の打ちよせる瀬を見ると、水が玉のように乱れている、でもそれを拾っても袖の中ではかなく消えてしまうのではないだろうか、ということ。 「うつせみ−はかなし」と含めている言葉と内容が合っている物名の歌である。これに対して、次のような忠岑の返しがついている。

 
425   
   袂より  はなれて玉を  つつまめや  これなむそれと  うつせ見 むかし
     
        この忠岑の返しは、滋春(しげはる)の歌と比べると、かなりグスグズでゆるい感じである。物名の部にはあと二つ、滋春の歌が採られている。

 
451   
   命とて  露をたのむ    かたけ れば  ものわびしらに  鳴く野辺の虫
     
465   
   春    なかし かよひぢ  なかりせば  秋くる雁は  かへらざらまし
     
        上は 「にがたけ」 で、下は 「すみながし」 (墨流し染めという染色法の一種)である。滋春の歌は物名以外にあと三つ( 355番 / 372番 / 862番 )採られているが、物名の歌の方が良さが出ている感じがする。

  "はかなからむや" は 「はかなから+む+や」で 「はかなし」の未然形+推量の助動詞「む」の終止形+疑問を表す終助詞「や」。 「はかなし」という言葉を使った歌の一覧については 132番の歌のページを参照。

 
( 2001/05/03 )   
(改 2004/02/24 )   
 
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