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       友だちの、人の国へまかりけるによめる 在原滋春  
372   
   別れては  ほどをへだつと  思へばや  かつ見ながらに  かねて恋しき
          
     
  • ほど ・・・ 間隔
  • かねて ・・・ その前から
  詞書の 「人の国」とは、京から見たその他の地方を漠然と指すものと言われている。賀茂真淵「古今和歌集打聴」には「
ひとのくにとは他国と書て古くはから国の事にいへり」と書かれている。

  
一度別れてしまうと、しばらくは距離も離れ、次に会うまでの時間も長いかと思うと、こうして目の前に見ながら、もう姿が見えなくなってしまったかのように寂しい気がする、という歌。この歌の一つ前には、似たような内容の貫之の歌がある。

 
371   
   惜しむから  恋しき ものを  白雲の  たちなむのちは  なに心地せむ
     
        どちらも 「別れる前から恋しい」という点は同じで、古今和歌集の配列から言えば、貫之の歌の 「白雲」はその前の 370番の紀利貞の歌の 「春霞」と引き合っており、滋春の歌は、見えるか見えないかということで、続く次の伊香子淳行(いかごのあつゆき)の歌と共鳴している。

 
373   
   思へども  身をしわけねば  目に見えぬ   心を君に  たぐへてぞやる
     
        「かねて(予ねて)」という言葉を使った歌の一覧は 253番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/06 )   
(改 2004/02/02 )   
 
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