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       やよひのつごもりの日、花つみよりかへりける女どもを見てよめる 凡河内躬恒  
132   
   とどむべき  ものとはなしに  はかなくも  散る花ごとに  たぐふ心か
          
     
  • たぐふ ・・・ 連れ添う
  詞書の意味は「陰暦三月の末日、花摘みから帰ってきた女性たちを見て詠んだ」歌ということ。続く 133番の在原業平の歌の詞書にも 「やよひのつごもりの日」とある。 「花つみよりかへりける女ども見て」というのは、躬恒の家に帰ってきたわけではなく、単に帰る途中の姿を見てということであろう。とすると 「帰ってゆく」とした方が近いのかもしれない。

  歌の意味は、
とどめておけるものではないが、散る花の一つ一つに、はかなく心が引かれるものだ、ということ。この歌と 「左兵衛定文歌合」で合わされている 130番の元方の歌から類推すると、
 "とどむべき  ものとはなしに" と言っている対象は 「春」であると考えられる。遠ざかってゆく女たちと花を見て春の終わりを惜しむ歌というところか。

  「はかなし」は 「はかない・むなしい・心細い」というニュアンスを表す言葉で、それを使った歌には次のようなものがある。

 
     
132番    はかなく  散る花ごとに  たぐふ心か  凡河内躬恒
424番    拾はば袖に  はかなからむや  在原滋春
522番    行く水に  数かくよりも  はかなき  読人知らず
561番    宵の間も  はかなく見ゆる  夏虫に  紀友則
575番    はかなく  夢にも人を  見つる夜は  素性法師
586番    はかなく人の  恋しかるらむ  壬生忠岑
644番    夢をはかなみ  まどろめば  いやはかなにも  在原業平
759番    来ぬ人たのむ  我ぞはかなき  読人知らず
835番    はかなき世をも  うつつとは見ず  壬生忠岑
859番    はかなきものは  命なりけり  大江千里


 
( 2001/11/29 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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